長い雨も止み、薄暗かった森に日の光が少しずつ差し込んでいく。洞穴で一匹、じっと丸まっていたピカチュウが、温かな日差しを感じて顔を上げた。
木々の切れ間に、キラキラ輝く何かが見えた。いったいなんだろう。ずっと閉じこもっていたピカチュウは、久々のきらめきに胸を躍らせ、洞穴を飛び出す。木漏れ日がピカチュウの身体まで輝かせてくれるようだ。興奮して走っているせいか、いくつも水たまりにはまり、水しぶきに驚き、草むらに潜んでいたポケモンたちが顔を上げる。元気なピカチュウだな、と、ちょっと呆れて、でも微笑んで、またゆっくりと眠りにつく。
ピカチュウは夢中になって森の出口目指して駆け抜けた。森を抜けると、薄暗かった景色が一気に開ける。まぶしい、とピカチュウは目を細めた。青い空、わたあめのようにたたずむ大きな入道雲。そんな中に、ピカチュウは七色に輝く光を見つけた。山を越えるほどの大きな、キラキラ光る七色の橋。あんなもの、前にもあったかな? 長い雨が運んできた、とくべつなプレゼントなのかもしれない。ピカチュウの目はあの光のようにキラキラと輝いた。
その時、ピカチュウの頬にピリッと電流が走る。そうだ、ずっと森の中にいて、身体の中に電気がたくさんたまっていた。ピカチュウは思い切り、ほうでんした! 軽くなった身体が嬉しくてぴょんぴょんと跳ねるうち、とびっきりのアイディアを思い付いた!
もっと、あのキラキラを近くで見てみよう!思いついてすぐに、ピカチュウは走り出す。うっすら濡れた冷たい草原が気持ちがいい。けれど、走っても走っても、あのキラキラはちっとも近づいたように見えなかった。おかしいなあ、と思いながらも、ピカチュウは走るのをやめない。あのキラキラのふもとには、一体何があるんだろう。胸がドキドキと高鳴った。
だが、丘の中腹に行き当たったところで、キラキラは蜃気楼のようにすうっと空に消えてしまう。思わずピカチュウは足を止め、息の上がった身体で、少しだけ俯いた。せっかく長雨を我慢したのだ。もう少し、ごほうびをくれてもいいのに……。
すると、背後から誰かが近づいてくる音が聞こえてきた。振り返るとそこには、ピカチュウと同じように晴れるのを待っていた森のポケモンたちが立っている。
あのキラキラの橋は消えてしまったけれど、みんなとのキラキラな毎日は、これからも、ずっとつづく。
さっきのキラキラ、すっごく綺麗だったね!君も見てたの?目を輝かせる仲間と共に、ピカチュウは森に帰っていった。今度あの七色の橋が出た時は、みんなで一緒に、走ってふもとを見に行こう。