“ただいまから第102回タマタマ会議を始める。今日の議題は危機管理、というわけで”
“101回じゃなかった?”
“キキカンリ…?つよそうな名前だなぁ…”
“名前じゃねーよ”
タマタマは6匹でひとつ。いつもテレパシーで会話し、いつも一緒に行動しているが、1匹1匹性格は全然違う。だから定期的に会議を開いて全員の意見をすりあわせることにしている。タマタマは運命共同体だ。なぜかは分からないけれど、タマタマにおいては話し合った方がだいたいうまくいくのだ。一度はじめると、議題に関係あることないこと、話が止まらなくなるのが玉にきずなのだが。
“忘れたの?この前、タマゴに間違われて大変な目にあったでしょう”
“あんなの二度とごめんだ。俺なんてヒビ入ったんだからな。草むらに隠れてるのが一番!そしたら見つからないだろ?”
タマタマは全員で低木のふもとに身を寄せた。なるほど、芝生はふかふかで居心地が良いし、生い茂る葉っぱのお陰で外から見えづらい。ここでじっとしていれば身を守れそうだ。これにて今回の会議は終了かと思われた。
“それにしても、タマゴに見えたってひどくない?あいつらの目は節穴?”
“遠くから見たらタマゴに見えるのかもよ”
“見えないって!”
1匹がころんと転がって、空がよく見えるところまで移動した。
“ここから眺めると、あの雲もほら、この前出会ったアイツにそっくりだろ。それと同じさ”
そう言われたもう1匹も転がってきて、芝生のカーペットの上に並ぶ。
“アイツって誰のことだよ?”
“ほら、へんしんする奴だよ。雲みたいにふわふわというかフニャフニャというか…そんな感じだっただろう?”
さらに1匹、もう1匹と隣に転がってきて、いつの間にか6匹は輪になって空を見上げていた。空がよく見えるということは、空からもよく見えているということだ。近くではニューラがポケモンのタマゴを狙いに来ていた。ニューラは見晴らしの良い木の上で目を光らせる。まさに議題の通り危険が迫っているというのに、タマタマ会議は脱線を続け、雲がフニャフニャのへんしんするポケモンに見えると大盛り上がりしている。
“アイツみたいに自由自在にへんしんできたら、タマゴに間違えられることもないんだけどな”
“そうだ、どうやったら身を守れるかって話だった…。いつの間にか全然違う話になってる…。ああ、会議っていっつもこうだ”
“……でもさあ。こんなお天気の日は、ずっと陰でこそこそしてるより、みんなで寝っ転がって空でも見てた方がいい気がするんだよ”
これにはみんな賛成だった。その直後、会話は途切れた。
その日、円を描くように並んだ6匹のタマタマは、木の上のニューラから見たら野原に咲く大きな花に見えたらしい。だからタマゴに間違われることもなく、狙われることもなかった。タマタマはずっと空を見上げていた。それ以上異論も出ず、自然に会話が途切れたのだ。偶然か、運命か、会議の結論が彼らを守った。やっぱり、タマタマにおいては話し合った方がだいたいうまくいくのだ。