いつも仕事で忙しいチラーミィのトレーナーは、チラーミィと違って散らかし上手。疲れて家に帰ってきたら、洋服をぽーんぽーん。鞄はドサッ。ご飯をもりもり食べるけれど、お片付けは後回し、後回し。そのたびに呆れてしまうチラーミィだけど、いつも頑張る彼女のためだ。今日は、サプライズで、トレーナーの書斎を掃除してあげる予定だ。運のいいことに、ドアはいつも開けっ放しなんだ。
書斎を覗いてみると、キラキラとホコリが舞って輝いていた。いつから掃除してないの?きれい好きのチラーミィは目を真ん丸にした。まずはきれいな空気と入れ替えなくちゃ。重たい窓を体をぎゅうっと押し付けて、うんしょうんしょと押し開けると、冷たくて気持ちのいい風が入ってくる。さあ、よどんだ空気を連れて行って!今日はお日様が出ているから、ひなたは温かい。ついまたウトウトしそうだけど、チラーミィはぶるぶると体を震わせて、さっそく壁沿いにある棚の上にぴょーんと飛び乗った!
お掃除は高いところから。棚の置いてある方にも、窓がある。こちらは開かないから、内側にたまったホコリをぱっぱ。ふわふわと舞い落ちるホコリが、少しずつ下に行くのに合わせて、チラーミィの尻尾も、だんだん下の方へ。トレーナーがお気に入りだと言っていた真っ白なランプも、ぴかぴかになったら喜んでくれるかも!まあるいフォルムに合わせて、尻尾をくるりんと回すと、一気に綿のようなホコリが付く。うわあ、きれいなランプに見えていたのに、拭いてみたらこんなに汚れてた。びっくりしたチラーミィは慌てて尻尾をつくろうけれど、そしたらホコリは床の方へ。さっき拭いたところにも、フワフワホコリが飛んでいく。ああ、きりがないや。でも、もうひとふんばり!
出しっぱなしの本も、テーブルも、チラーミィの尻尾が撫でると、みるみる汚れが落ちていく。あ、ソファの裏側も忘れないようにしなくちゃね。小さい体でもぞもぞと隙間に入ってぶんぶん尻尾を振り回す。チラーミィの掃除はいつも細かいところまで完璧だ。自慢の尻尾をハタキにしたり、ホウキにしたり、モップにしたり。チラーミィの通ったところには、チリひとつも残らない。
お部屋はきれいになったけれど、チラーミィの尻尾にはホコリがいっぱいついていた。きれい好きのチラーミィには、ちょっと気持ち悪い。そうだ、お風呂にはいっちゃおう! チラーミィはトレーナーの真似をして、お風呂場の蛇口を思い切り捻った!シャワーが勢いよく出てくると、きれいなお湯がチラーミィの尻尾を洗い流した。じゃぶじゃぶ、じゃぶじゃぶ、ああ、気持ちがいい。きっとトレーナーも、お部屋もチラーミィもきれいになったねと喜んでくれるに違いない……。
チャリンチャリン。と、外から音が聞こえてきて、チラーミィはくるっと廊下の方へ向いた。トレーナーが帰ってくるときに、いつも聞こえる鈴の音だ! チラーミィは嬉しくなって、濡れた尻尾もそのままに玄関へと駆け出した。
「ただいま! チラーミィ……って、わあああ!?」
拭き忘れた尻尾のせいで、せっかくきれいにした廊下もびしょびしょ。困った顔になっちゃったけど、きっと書斎を見たら、喜んでくれるよね。