今日は森にいるポケモンをたくさん捕まえよう!リュックいっぱいにモンスターボールを詰め込んだ。いつもとは違うポケモンに会おうと、青々とした森の中を新品のスニーカーを履いてずんずんと進んでいく。夢中になって歩いていると、かなり遠くまで来ていた。いつもの森よりここはしんとしている。
辺りを散策しようとすると、後ろから草の揺れる音が聞こえた。慌てて振り返ると、そこにはたくさんの草木が生い茂っている。音の主に気づかれないよう、草をしっかり押さえながらかき分け進むと、大きな樹が急に目の前に現れた。うわあ、大きいなあと顔をあげると、ちょうど自分の背より少し高くにある洞に、まぁるい影が見えた。
「見つけた!」
嬉しくて思わず声が出てしまった。まずい、と思って慌てて口をおさえると、丸い影は洞の前にある枝に飛び乗って、ばさっと翼を広げてみせる。モクローだ!モクローの大きな瞳は、自分が映っているのまで分かるくらい、キラキラして見えた。絶対捕まえたい!トレーナーは無我夢中でモンスターボールを投げた。それに対し、モクローは怯えることなく、もっと大きく翼を広げてみせてくる。
「もふぅっ!もふぅっ!」
逃げるわけでもなく、一生懸命に鳴いているところを見ると、モクローは何かを伝えようとしているのかもしれない。一体どうしたのかと近づいてみると、モクローの周りにこのはが舞い飛んでいるのが見えた。まずい、攻撃される!
「もーーーーふっ!」
身体を転がしてこのはをなんとか避けた。このはは真っすぐトレーナーの後ろに飛んでいき、何かに当たったようだった。こちらにいかくしていたと思っていたモクローは、トレーナーの後ろに向かっていかくを続けている。狙っていたのは、自分じゃない……?
ハッと振り返ると、低いうなり声をあげて大きなポケモンがこちらをにらんでいた。どうやらここは、そのポケモンの縄張りだったようだ。トレーナーの身体よりもうんと大きいその姿に、思わず腰が抜けそうになる。
だが、モクローは怯むことなく、もう一度とびついて、あっけなくはじき落された。
足元に転がって来たモクローが気絶しているのを見て、トレーナーは慌ててモクローを抱き上げた。逃げなきゃ。モクローがやられちゃう。とにかく、あの大きな影が自分たちを見失うまで、走れ、走るんだ!新品のスニーカーが汚れるのもかまわず、泥を踏みこえ、うす暗い森を抜け、大きな野原にたどり着く。あの草むらに隠れよう!トレーナーはモクローを庇いながら草むらに転がり込んだ。
森の出口から、大きな影が野原を見回しているのが見える。自分たちを探してる……。心臓がバクバクとして、息が荒くなる。しかし、諦めたのか大きな影は森へと戻っていった。ホッと一息、リュックから、げんきのかけらを取り出してモクローにあげた。元気にはなったようだけど、モクローの羽は逃げている間にぐしゃぐしゃになってしまっていた。
「あのポケモンのなわばりを荒らして、怒らせちゃったせいで……巻き込んでごめんね」
「もふ」
「なのに……守ってくれてありがとう」
汚れた羽を繕ってやっていると、モクローは気持ちよさそうに目を瞑ってされるがままになっていた。まぁるいフォルムが元に戻ると、今度はぱたぱたとトレーナーの頭の上に乗り、ぐぐっと体重をかけてくる。寝転がれってことなのかな……?言われるがままに寝転んでみると、きれいな青空が目の前に広がった。
モクローはトレーナーの腕の中でスヤスヤと寝ている。勇気を出して戦ってくれたんだもん、疲れたよね。トレーナーはふわふわしたモクローのお腹をそっと撫でてみた。その手触りはまるで、モクローの優しさみたいに、ふわふわで温かかった。