シトシト、サーサー、ザーザー!灰色の雲が空に浮かんでいたかと思うと、ものすごい勢いで雨が降り注いできた。コロボーシは慌てて、近くにあった洞窟に転がり込んだ。外の雨は地面に叩きつける強さになっていた。ああ、びっくりした……。濡れた身体がわずらわしくて、コロボーシは自分の身体をブルブルと震わせた。すると、洞窟の奥の方から、コロンコロンと大きな音が聞こえてきた。びっくりして飛び上がったコロボーシが注意して耳をすましてみると、その音が自分の触角の音とそっくりなことに気づいた。もしかしたら奥にも仲間がいるのかも?ワザと触角を鳴らしながら歩いてみると、奥の方から同じ音が返ってくる。奥へ奥へ、コロボーシはコロンコロンと進んでいった。奥に進むごとに、だんだん中が温かくなっていく。
ポッポー!聞きなれない音に、コロボーシはびっくりしてまた飛び上がった。慌てて岩陰に隠れると、ズシン、ズシンと足音が近づいてくる。揺れる地面に体を縮こませていると、じわっと温かい湯気がコロボーシの身体をつつんだ。
コローン……。コロボーシが顔を上げると、オレンジ色の顔が、蒸気を出しながら自分を見下ろしていた。洞窟に住んでいるコータスが、音を聞いてやってきたのだ。
ポッポー!と拭きだされる温かい蒸気が、コロボーシの冷え切った体をじわっと温めて、思わず力が抜けてしまう。その姿を見て、コータスは満足げにその場に座り込んだ。すっかり温まった周囲の気温に合わせて、コータスの鼻息は汽笛のような音から笛の様な音に変わっていく。コロンコロン、ホーホー、ザーザー。コロンコロン、ホーホー、ザーザー。雨と、触角と、鼻がなる音がまるで音楽のように合わさったのに気付いて、コロボーシは楽しそうにその場に飛び跳ねる。洞窟に反響している音が、いつまでもいつまでも鳴り続けて、コータスも思わず顔を上げた。さっき聞こえた音も、ここで響いて返ってきてたんだ。
雨音がしなくなって、コロボーシは試しにコータスと洞窟の外を確認しに行った。ありがとうとコータスに向かってコロンコロンと触角を鳴らしてみせると、後ろからぴちょんぴちょんと音がした。森の木々に溜まった雨粒が、風に揺られて落ちている音だ。コロボーシは一緒に外に出てみようとコータスの上に飛び乗って誘ってみせた。雨が止んだ今なら、コータスも外に出れそうだ。ぐるりと空を見上げ、もう灰色の雲がないのを確認すると、コータスは一歩、洞窟から出てくれた。
コロンコロ、ポッポ、ピチョンピチョン。行く先々で彼らを包む音が変わり、それに合わせて二人は音を奏でてみる。洞窟にはなかった音が森に響いて、足取りも軽やかになってきた。森のポケモンたちは、何事かと草むらから顔を出し、陽気な様子のコロボーシたちにぞろぞろとついて行く。コロコロ、ポー、キャッキャ、ピィピィ、シトシト、ぽちゃぽちゃ。
陽ざしがキラキラと照らす道を、ポケモンたちがずんずんと進む。その行進が、濡れてすっかり冷えたポケモンたちの身体をぽかぽかと温めていく。コロコロ、ポー、キャッキャ、ピィピィ、シトシト、ぽちゃぽちゃ。コロボーシの触角が生み出した森の陽気なポケモンたちのパレード。