ミミッキュはへこんでいた。公園に来れば友だちが出来ると思っていたが、甘かった。よく晴れた公園の隅っこで、自販機の影に隠れ、ミミッキュはぽつりと佇む。遠くで楽しそうな声がするのに、誰も近寄ってきてはくれない。自分から話しかけたいけれど、もしかしたら怖い思いをさせてしまうかもしれない。嫌な思いをさせるくらいなら、自分がさびしければいい。だからいつもミミッキュはさみしがりやのままだった。ここ最近でいちばんお天気の日を選んだのにな。かぶっている布も縫ってきたのにな…。
カラン、カラン。なにか聞こえた。ミミッキュが顔を上げると、人が歩き去るところだった。声をかけてくれたのだろうか。ミミッキュは緊張して固まる。でも、その人はさっさと行ってしまった。声なんてかけられるわけないか。がっかりして振り返ると、目の前にピカチュウの顔が現れた!今度こそミミッキュは固まってしまった。どうしよう、あのピカチュウが。人気者が、会いに来た。いいや、ニセモノの化けの皮を剥いでやるって怒りに来た?……ぐるぐる皮算用が駆け巡り、ぱちんと弾けた。よし、挨拶してみよう。ミミッキュは握手するようにピカチュウに触れる。
カラン、カラン。ピカチュウは転がった。……反応が返ってきた!ミミッキュの耳がピンと立つ。分かっている。これはホンモノのピカチュウじゃない。さっきの人が捨てていったモノだろう。でも、ミミッキュにとっては、はじめて友だちが出来たみたいで嬉しかった。手を差し出し、ミミッキュは何度もピカチュウに挨拶する。その度に、カラン、カランと軽快な音が鳴った。憧れのピカチュウだって、挨拶すれば返事をくれるんだ。ミミッキュはもうさびしくなかった。どうやって友だちを作るのか分かったからだ。
後日、公園の自販機には近寄らない方が良い、人影もないのに缶の音がずっと鳴っているからだ――と噂が立ったことは、また別の話である。