例えば、夜空に浮かぶ月。例えば、野に咲く健気な花。目に映る世界には、美しいものが溢れている。じゃあ、見ることができない美しさはどこにあるんだろう?きっと簡単には出会えない。そう、例えばこの物語みたいに。
今は一人になりたい。
そんな気分で逃げ込んだ夜の丘に、巨大なポケモンが現れた。あんな存在感のかたまりみたいな奴がいたらとても無視できないじゃないか。はやくどこかへ行ってほしいのに、奴はどうとでも解釈できる奇妙な表情のまま居座り続ける……。
夜でも明るいこの町で、光を見いだせなかった僕。何にも真剣になれず鬱屈とした毎日に、しかし転機がもたらされる。星のようにまぶしく、雷のようにパワフルなあいつの、間抜けな大あくびによって。
リングの上ではめらめらスタイルのオドリドリがポケモンと対峙していた。オドリドリはぴたっとステップを止めると、翼を頭上に掲げ、翼の先まで凛と伸ばしたその瞬間、赤い翼がメラメラと美しい炎に包まれ輝いた。鍛錬を重ねたオドリドリの新たなワザに、思わずポケモンも息をのんで……。
ある屋敷に、こんな話が書き残されているという。
あの子の叫び声が聞きたい、いたずら好きのゲンガーはそんなことを考えていた。あの子は子どもなのにやけに落ち着きはらっている。あの子は見るからに賢そうで、墓地で球蹴りをしている子どもたちとは違う。そのすました顔を、ゲンガーは台無しにしてみたいのだ。
一匹のイワンコが群れからすがたを消した。切り立った岩場が目立つ遺跡地区。この辺りの小さなイワンコたちは、いつも群れて遊んでいる。真昼には一緒にいたのに、そのうちの一匹が黄昏時になって姿を消したのだ。
切り立った真っ赤な岩山の合間には、色とりどりの花が咲いている。この花畑では、太陽がすっかり昇り切ったころ、巣にしている樹から降りてきたアーケンが花畑の中で踊る姿を観測できる。
木々の合間から陽が降り注ぎ、キラキラと輝く森の中。モンジャラはピカピカのズリのみをツルで持ち、日の光に照らしてうっとりとそのピンク色の輝きを観察していた。
水面から降り注ぐ真っ白な光は、晴れ渡った空模様を知らせていた。身体をうねらせ水をかけば、泡立った気泡がキラキラと宝石の様に踊りだす。その光がウロコに反射し、ますますその姿を飾る様子に、湖の中を泳ぐポケモンたちも思わず見とれていた。
ホエルオーが海中をゆく。いちばん大きなそのポケモンは、優雅に直進するだけで周りの水流を巻き込んでいく。背後から迫る巨大なシルエットと水圧に、近くを泳いでいたヨワシの列がぱっくり割れた。
満月のまばゆい光に照らされ、キラキラと輝く泉のほとりにテントを張っていると、月明かりの下で楽し気にダンスをしているピッピたちに出会う。その姿は、思わず見とれてしまうほど幻想的で――。
ミミッキュはへこんでいた。公園に来れば友だちが出来ると思っていたが、甘かった。よく晴れた公園の隅っこで、自販機の影に隠れ、ミミッキュはぽつりと佇む。
木々の密集する森の奥で、飛び跳ねる様に駆け回っていたコノハナは、草むらに丸い影を見つけた。なんだろう?とガサリと草を少しだけかき分けてみると、何か見覚えのあるものが落ちていた。
しっぽを揺らし、レンガを鳴らし、今日もあの子がやってくる。誰にもなびかない、どこにも属さない、街で噂のロコンちゃんが。
誰もが寝静まった真夜中のキャンプ地にて、ひらりと舞い飛ぶ影があったら、それはカゲボウズかもしれない。
フラワーフェスティバルでは、トレーナーたちが自由にポケモンを遊ばせている。そんな中、野生のエモンガもパチパチと電気を弾けさせながら飛び回った。だが、その下の花畑の中に困り顔のポケモンの姿が見える。あれは、アブリボンだ。
ねむけざましでも摂ったみたいに眠れない夜だった。私はベッドから窓の外を眺め、満月が欠けるまで眠れなかったら、とか、つまらないことを考えていたと思う。夜更け過ぎ、庭にキュワワーが現れた。
昼休みのビル街に、ミュウツーは突然現れた。その圧倒的なたたずまいに、威厳に、男は立ち尽くす。なすすべもない自分に悔しくなりながら、心は無謀にも熱くなっていた。もう一度強くなって、きちんと君に挑みたい。だから……。心の声はミュウツーに届いたのだろうか?
警戒していたヨーギラスが、ようやくトレーナーからきんのズリのみを受け取る。恐る恐る一口食べ、そっと顔を上げた。そして、その目が細くなる。一瞬頭がフリーズして、トレーナーは理解した。ヨーギラスは微笑んだのだ。胸がじんと震える。朝の冷えた空気の中、からだの一番奥があたたかくなった気がした。
巣を作ろうと樹に登ろうとするが、上手くいかないイトマルを手伝ってあげたトレーナー。だが、嬉しかったのかイトマルはせっかく登った樹から降り、トレーナーに飛びついてくる。それなら、自分の家に巣を作るのはどうだろうとイトマルを連れて帰ったけれど、なんだかイトマルの様子がおかしくて……?
握りしめて、投げるだけ。よく狙って、投げるだけ。そう言い聞かせ、新人トレーナーはボールを投げた。なのにエイパムは軽々と避けてニコニコニコニコ笑っている。初めてのフィールドリサーチ、絶対結果を残してやる。夢中で追いかけているうちに周りは知らない景色になり、新品のスニーカーは泥だらけになっていた。
ウィロー博士からコイキング大量発生の知らせを受け、チームヴァーラーの仲間と一緒に湖にやってきた。湖のほとりに打ちあがるコイキングを捕まえようとするけれど、せっかく投げたモンスターボールは尾びれに弾かれて飛んで行く。悪戦苦闘しながらも、果たして二人はコイキングを捕まえられるのか?
ジム初挑戦で勝利を収めたトレーナーは、おだてられるままに次のジムへ。しかし、そこにはハピナスが自信ありげに待ち構えていた。皆の前で敗北することを恐れるトレーナーだが、後に引き下がれずジムチャレンジへ。打倒ハピナスと、ルカリオと共に戦いに挑むが、はたしてジムリーダーの座を手に入れることができるのか?
山の中腹にて、調査隊員は橙色の体躯に縞模様、モコモコとしたたてがみに覆われた二体のポケモンを観察していた。だが、誤ってモンスターボールをぶつけてしまったことで、調査隊員は危機に瀕する。だがその時、山頂より観察していたポケモンよりもはるかに大きな咆哮が聞こえてきて――。
顔を上げると、そこはうっそうとした森の中だった。調査隊員は視界の隅に、ゆらゆらとたゆたう、白と珊瑚色が入り混じった小さなポケモンを見つける。警戒し縮こまっていると、突然、目の前に自分と同じ姿をした「何か」が現れた。どことなく寂しげな瞳は、調査隊員の心を何故か惹きつけて……。
お屋敷のマギアナは、窓の外の草原を羨ましく眺める。人の手によって造られ、人のお世話をする機会が多かったから、マギアナには外の世界がわからなかった。そんな機械仕掛けのポケモンに、大きなお屋敷の小さな部屋で起きた出来事について話をしよう。
そのイトマルは、綺麗で整ったお屋敷に興味を惹かれていた。いつか緻密で美しい巣を編めるようになりたい、そんな美学を持っていたからだ。その思いを誰かと分かち合えるなんて思ってもいなかった、或る機械仕掛けのポケモンに出会うまでは。
ほしい。ほしい。あのきらめきがほしい。夜空に輝く星には手が届かないが、この森には手を伸ばしたら手に入れられる「星」がある。ホシガリスはきのみを手にとり、まるで一等星のように輝いて見えるそれをうっとりと眺める。跡も残さず後をつけるクスネには、気づきもせず。
静かな森の真ん中で、ようやく見つけた可愛いモクロー。ボールを投げるのが下手なトレーナーが四苦八苦しているのをよそに、モクローは何か訴えているようだ。振り返ると、大きなポケモンがこちらをにらんでいた!トレーナーをかばい傷ついたモクローを救うため、今度は自分が、走るんだ!
しゅぎょうポケモンのフタチマルは、公園の池で大の字になってだらけていた。剣士も裸足で逃げ出すほどの実力を持ち、常に修行に励む真面目なフタチマルがこうしているのにはワケがある。その一部始終を、同じ池にいたシビシラスが見ていた。
雨宿り中の洞窟でコロボーシが出会ったのは、蒸気を出して汽笛の様な音を出すコータス。触角の音とセッションすると、音楽のできあがり。雨あがりの森に飛び出して演奏を披露していると、ほかのポケモンたちもついてきた。愉快なポケモンたちのパレードが長い長い行列を作って、森をずんずん進んでいく。
長い旅路の途中でカラナクシたちと久々に訪れた海。はしゃぐ彼らを見ながら、バトルが苦手で失敗ばかりのトレーナーはうつむいていた。そんな気持ちもつゆ知らず、楽しそうなカラナクシたち。そんな姿を見ていたら、悲しい気持ちもどこかに消えて。誰がなんと言ったって、この旅は私たちの宝物だね。
ミツハニーは今日も花畑を飛び回る。「今日の気分は赤いお花さ」「青い花のがおいしいよっ」「ビークインさまはこっちが好きだもん!」今日一番の働きを見せたものが、ビークイン様と真夜中のダンスを踊ることができる。素敵な夜を夢見ながら、ミツハニーは野原を飛び回る。
森でヒトモシと鉢合わせたら、帰れなくなる。そんな噂があるせいか、ヒトモシはしばらく生命力を吸えずにいた。今日こそ獲物を捕まえてやる!と、意気込んだ矢先に現れたのは、迷子の子ども。ヒトモシを見てホッと笑顔になったその子を見て、ついつい森の外まで案内してしまうのだった。
金髪の少年ははじめての冒険の最中で、何でもない道でも目に映る全てが特別だった。それを見ていたムックルの兄弟も、少年につられて時間を忘れるほど特別な午後を過ごした。ただ、何にも動じないのんびりやのビッパだけが、いつもと変わらない202ばんどうろの風景を眺めていた。
ブーバーの足元の雪が、じゅわりと一瞬のうちに昇華していく。吐く息も熱く、周囲の雪を水蒸気に変え、あたりには真っ白な水蒸気が立ち込める。寒いと動きが鈍ってしまうブーバーには、過ごしづらい季節。けれど、大好きな森の中、少しでも温めようと、そぉっと、優しい火を灯す。
果実を求めて森に降り立ったトロピウスが出会ったのは、不思議な綿毛を愛するキノガッサであった。風でふわりと飛んでゆく綿毛は、いったいどこへ行くのだろう。二人で綿毛を追いかけて、風の行く先へ。向こうには、どんな世界が待っているのだろう。
タマタマは6匹でひとつ。いつもテレパシーで会話し、いつも一緒に行動しているが、1匹1匹性格は全然違う。だから定期的に会議を開いて全員の意見をすりあわせることにしている。タマタマは運命共同体だ。会議が脱線ばかりするのが玉にきずだが、話し合った方がだいたいうまくいくのだ。
そのムクバードは恐らく進化したばかり。だが、やけに凛としていた。ナナカマド博士が「すまんが、今はカバンには何も入っておらん」とカバンを開けてみせると、ムクバードは納得したのか満足したのか、翼を広げて羽ばたいていく。それから毎朝その成長を見守るのが博士の日課になった。
寒い冬の公園は一見物寂しい。しかし実は、公園の端っこの大きな木ではミノムッチたちが熱いバトルを繰り広げていた。争いの発端は、くさきのミノとすなちのミノの陣取っている場所が近すぎたことだった。些細な言い争いはいつの間にか、どのミノが一番か競うミノバトルに発展している。
とってもきれい好きなチラーミィは、めんどうくさがりなトレーナーのために、今日も大忙し。自慢の尻尾を使っておそうじおそうじ。ああ、帰ってきたらあの子は喜んでくれるかな? あの子が帰ってくる前に、自分もピカピカにして、完璧にお出迎えするんだ。
ムクホークは、進化したのをきっかけに群れを離れ、泊まる宿を探し空を飛んでいた。しかし、川辺には大きなダムを作っているビーダルが、海にはテレパシーで顔同士言い合いをするナッシーが待っていた。巣立ったばかりのムクホーク。彼の旅は、まだまだ始まったばかり。
ここだけの話だが、珍しいポケモンが人々の間で伝説や幻と噂されるように、ポケモンたちの間でもトレーナーやモンスターボールの話題が出ることがあるらしい。その朝、ユキワラシがクリムガンから聞いたのは、甘くて危険な「ウワサのみ」の話だった。
毒のある物言いをすれば、角が立つ。例えば、“大きいやつの方が強いなんて、当たり前じゃない?”などと、力自慢の大きなポケモンに言うべきではない。そう思ったとしても口には出さないのが森で生きるすべだ。しかし、ビードルはついつい毒づいてしまうのだった。
釣り人はため息をついた。獲物用のバケツに、いつのまにかオクタンが居座っている。すでに、自分の物のように日向ぼっこを謳歌して完全無視だ。釣り人は彼をツンとつついてみる。「わあ、キミ、冷たくて気持ちいいね」暑いからちょうどいいやと、さらに触った彼女の顔が真っ黒になったのは、すぐ後の話。
チームワークがない。トレーナーにそう言われたばかりなのに、ポケモンたちには協調性どころか会話ひとつなかった。ニューラは爪を研いでマーイーカに勝負を仕掛けようと好戦的な笑みを浮かべる。対するマーイーカは雪にへばりついて落ち込んでおり、全然戦うモードじゃない。
ラルトスが恐れない唯一の人間。猫背でマスクの、内気な男。ポケモンを持たない男は、いつも花畑で待ち合わせラルトスの隣に座り、静かに時間を過ごして去っていく。彼が微笑みかけると、ラルトスのツノはじわりと温まる。そんな彼と、いつか、他のポケモンとトレーナーのようになれたら。その願いは、まだ小さな胸の中にしまったまま。
女の子が店の前に立っていた。やけに虚ろな、真っ暗な目をしていた。声をかけても返事はなく、マスターは困ってしまった。副店長ともいうべきマスターの相棒――マホイップが店の中からどうしたのだと様子を伺っている。このまま帰ってもらうのも気が引けて、少女を店内に案内した。
「アタシとジュペッタの絆、とっても強いんだ!」もう一度誰かに愛された時、ジュペッタの怨念は晴れ、もとのぬいぐるみに戻る。そんな言い伝えを、幼いころに聴いていた。それでも、フヨウとジュペッタは繋いだ手を離さない。私たちが選んだ未来だけを、一緒に突き進んでいこう。私たちの、特別なステップで。
ナゲツケサルの群れの中、動きについてゆくのもやっとの、幼きメッソンの習慣。それは、ボスと向き合って行う、朝の秘密の特訓。心をひとつに、重ねて。たとえちがうポケモンだとしても、共に鍛え、寄り添い、生きていく、ひとつの家族の物語。
梅雨明けの日がやってきた。この平原では、この日に必ず七色のキラキラした橋が見られる。今日こそあのキラキラのふもとにたどり着いてみせると、ピカチュウが気合を入れると、体中からバチバチとほうでんした!橋のふもとには、何があるんだろう。空の上まで届きそうな速度で、ピカチュウは駆け出していく。
ポッポが普段いない場所にいた、たったそれだけの情報が博士の予定を狂わせた。オーキド博士は根っからの研究者だ。翌日も早いことなんてお構いなし。興味深いデータが手に入ったと分かるやいなや、スイッチが入ってしまうのだ。